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数値は外部に明示されていないとはいえ、低いインフレ率をFRBが好んでいることは自明である。

しかも、市場参加者の大半が「B議長はコアPCE価格指数で計測したインフレ率でプラス一〜二%を望んでいる」ということを既に認識している。 となると、FRBが公式にインフレ・ターゲットを宣言しても、しなくても、市場のインフレ期待に与える影響は決定的には異ならないだろう。
二月と七月に行われているFRBの議会報告の中に、FRB理事と地区連銀総裁によるインフレ率予想がレンジで示されている。 そのインフレ率はコアPCE価格指数で表されている。
従来から多くのFRB幹部は、「どれかひとつの指数を挙げよと言われれば、コアPCE価格指数が妥当だ」としてきた。 ただし、それは比較上の優位性であって、FOMCはコアPCE価格指数だけを見てインフレの状態を判断しているわけではない。
歴史的にFOMCメンバーは数多くの物価統計を見ながら物価のコンディションを判断してきた。 なぜなら、インフレ率を測定する指標は多種多様であり、それぞれ特性を持っているからである。
二○○五年末に日本では、インフレ指標からエネルギー関連を除くべきか否かという議論が沸き起こった。 量的緩和策を解除したがる日銀が政策変更の基準に据えている数値は「全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)前年同月比」である。
それにはエネルギー関連が含まれている。 二○○五年末頃から同数値はプラスに転換することが予想されていたが、原油価格高騰の影響を除けばマイナスではないか?という指摘が現れていた。
中央銀行が重視するインフレ指標にエネルギー関連を含むべきか否かという問題は、国によって対応が異なっている。 ECB(欧州中央銀行)、イングランド銀行、スイス国立銀行、ニュージーランド準備銀行などはエネルギーを含んだ指標を目標に採用している。
一方、FRBは前述のようにコアPCE価格指数(総合からエネルギー関連と食品を除いたもの)を比較的好んでいる。 しかし、これに関しては議論が存在している。
また、コアPCE価格指数をとってみても、金利の方向性に帰属サービスが影響されるクセが存在している(それゆえ、米商務省は"市場基準”というシリーズを新たに発表している)。 FRBがインフレ・ターゲットを宣言するとき、目標からの逸脱の許容期間や達成期限を具体的かつ明確に記述するだろうか?答えはノーだろう。
そのような期限を設けない「拘束の緩やかなインフレ・ターゲット」になると思われる。 Bは二○○三年一○月一七日の講演で、彼がFRBに推奨するインフレ・ターゲットは(OLIR)、つまり、長期的に最適な平均的インフレ率だと述べている。
「FOMCはそのインフレ率を長期的な目標と見なしており、それを実現するための時間的なフレームは設定しない」。 また、Bは二○○五年二月一五日の上院でE議員(共和党・ニューハンプシャー州)の質問に次のように答えている。

仮定の話だが、FRBがインフレ率の目標をプラス一・五〜二・五%と宣言したとしよう。 しかし、二○○七年第4四半期のインフレ率の平均がプラス四・二%だったら、あなたは何を言い、何を行い、市場はどう反応するのか。インフレ目標は、明白に長期的、中期的な目標である。
明示的なターゲットが存在しているか、存在していないかが重要なのである。 私は、インフレ率を短期間でターゲット内に戻そうとするようなことはしない。
私は単にマーケットに対して、FRBは長期において物価の安定を約束していることを保証したいのである。 また、彼は二○○三年三月二五日の講演で、「インフレ・ターゲットの政策判断フレームワークは、"抑制された裁量“である。
インフレ・ターゲットは機械的なルールだという誤解があるが、それはフレームワークであって、ルールではない。 インフレ・ターゲットは生産や雇用を無視するわけではない。
FRBは、BとGの下で、"抑制された裁量"というフレームワークに徐々に向かってきている」と述べている。 以上を要約してみると、B率いるFRBが将来インフレ・ターゲットを正式に宣言する場合、それは中長期的な政策運営のひとつの目安であり、機械的なルールではないだろう。

コアPCE価格指数だけでなく、実際には他のインフレ指標も考慮に入れ、さらに、雇用や生産にも配慮する、という政策スタンスになるだろう。 したがって、毎月発表されるコアPCE価格指数が目標レンジに対してどこに位置しているか、という点だけを観測していても、フェデラルファンド金利誘導目標の先行きの動向は予想できないことになる。
となると、多くの人は「これまでGが行ってきた金融政策と何が違うのか?」という疑問を抱くと思われる。 実際、インフレ・ターゲットを決定しても、FOMCの金融政策運営の判断はそれ以前と根本的には変わらないとわれわれは予想している。
ちなみに、ニューヨークで市場関係者にインタビューしてみると、インフレ・ターゲットに対する関心は日本のマスメディアに比べ大幅に低い。 機械的ルールのようなインフレ・ターゲットを実行している国は現実には存在していない。
おそらく、世界で最も機械的ルールに近い金融政策運営を行っている国は、量的緩和策下の日本銀行だろう。 コアCPIが安定的にゼロ%以上となるまで量的緩和策を継続するという時間軸政策を掲げている。
このため、日本ではインフレ・ターゲットに対して、日銀の時間軸政策と類似のイメージを抱くケースが多いように思われる。 しかし、現実は異なっている。
例えば、スイスの例を見てみよう。 スイス国立銀行は「物価安定の定義」として消費者物価指数前年比で「プラス二%未満」という数値を明示している。
同行はそれをインフレ・ターゲットとは呼んでいないが、そう呼んでも支障はないだろう。 スイス国立銀行は二○○四年六月に政策誘導金利である三カ月物金利(LIBOR)を○・二五%引き上げ、事実上、「ゼロ金利政策」を解除した。
さらに同年九月には二回目の利上げ、二○○五年三月には三回目の利上げを行っている。 その結果、最近の三ヵ月物金利は一%前後まで上昇している。
しかし、同行が利上げ判断を行った時点で発表されていた消費者物価指数(前月分)を見るだけでは、なぜ利上げの判断が行われたのか分からないケースがある。 一回目の利上げが行われた二○○四年六月こそはインフレ率(五月分)が数カ月前よりも急上昇していたが、それでも言葉遣いは徐々に分かりやすくなっていくのではないか。

Gの下でのFOMC声明B議長は金融政策の透明性向上に注力する模様である。 彼は、すべての"手持ちカード”をテーブルに広げて、市場に見せることが、市場の期待の安定化に寄与するという考え方を持っている。
インフレ率予想の変化を注意深く見ていくことが大事となる。 B議長率いるFOMCがインフレ・ターゲットを採用する場合も、そのようなスタイルになるだろう。
なお、スイスの場合、ゼロ金利解除を含め三回の短期金利引き上げが行われたにもかかわらず、スイス一○年国債金利(連邦債)は、二○○四年六月の三%前後から二○○五年末に二%前後へ一%も低下した。

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